遊学塾「不思議発見 冬芽の観察会」詳報 


  「コート」まとい副芽で備え 冬越すための知恵学ぶ 

 春を待ち、冬芽に命を蓄える樹木の不思議さを学ぶ――。八王子自然友の会の菱山忠三郎さん(70)を講師に迎え、13日に開かれた「多摩さくら百年物語フォーラム」の1月の遊学塾「不思議発見 冬芽の観察会」。会場となった八王子市の都立小宮公園近くを流れる浅川付近からは、富士山の姿も望める冬晴れに恵まれ、46人の参加者は「冬を越すための木々のしたたかさや神秘性に魅力がある」(菱山さん)という冬芽を観察した。

 都立小宮公園には、武蔵野の雑木林に多いコナラとクヌギが広がるほか、コブシ、ムラサキシキブ、ミズキ、ソメイヨシノなど様々な木があり、冬芽観察には格好の舞台となった。

 参加者は、菱山さんの案内で園内を散策しながら観察にいそしんだ。冬芽には、葉が変形した芽鱗(がりん)で保護された鱗芽(りんが)と、芽が裸で保護されていない裸芽(らが)に大別される。菱山さんは、「服と同じで、寒いところの木はたくさん着込んだ鱗芽に、もともと暖かいところにあった木は何も着ていない裸芽になっていることが多い」と、人間になぞらえて説明した。

 また、コゴメウツギ、ムラサキシキブなどの木は、虫に主芽が食べられるなどの“不測の事態”に備え、主芽に代わって芽吹く副芽を持つことを紹介。菱山さんが、主芽と副芽の関係について「町内会の会長と副会長みたいなもの。会長が駄目になったら副会長が出てくるんです」とユーモアを交えて話すと、参加者は思わず噴き出していた。

 さらに、源氏物語の作者と同じ名前のムラサキシキブの冬芽について、菱山さんは「『十二単(じゅうにひとえ)は着ておらず』ではなく、何も着ていません。裸芽の木は副芽を作ることが多い」と解説。参加者は、木が持つ“知恵”に感心した様子で、虫眼鏡越しに冬芽を見つめていた。

 一方、鱗芽にも様々な形態があり、芽を守るために長く軟らかい毛がある芽鱗に包まれたコブシの冬芽は「ミンクのコート」、表面が硬い芽鱗に包まれたミズキの冬芽を「皮のコート」と菱山さんが例えると、冬芽の種類の豊かさにうなずいていた。

 観察会の最後に、菱山さんは持参したジャケツイバラの枝を見せながら、「副芽が五つもついている注意深い木で、冬を生き残るため工夫している。そんな所に少しでも目を向けてもらえれば」と呼びかけると、盛んな拍手が起きていた。

  府中市から参加した原島寿恵治さん(67)は「暖かいところの木の冬芽は『薄着』、寒い所は『厚着』という違いの面白さや生命力に関心した」と話していた。
   
 (1/16・読売新聞多摩版記事より転載 )