「源流地図」多摩川源流域の地図の奥多摩版が完成。

 多摩川源流域に記された先人たちの足跡を後世に残そうと、多摩川源流研究所長の中村文明さん(57)(山梨県小菅村)が、奥多摩地方の多摩川源流域の地図に載っていない滝や淵などの名前を網羅した地図「源流絵図・奥多摩版」を完成させた。中村さんは10年前から調査を始め、これまでに「塩山・丹波山版」「小菅版」を完成させており、「奥多摩版」の完成で約4300ヘクタールの多摩川源流域の全図が完成した。

 読売新聞創刊130年を記念した地域貢献活動「多摩さくら百年物語フォーラム」の運営委員も務める中村さんは、写真撮影のために源流域を歩き地元の古老と話すうちに、炭焼きや木材の切り出しなど、山とかかわりって生活していた人たちに名づけられながら、地図に載っていない地名が多数あることを知り記録することを思い立った。

 奥多摩版は2001年から調査を開始。20数人に話しを聞き、160回近く源流域を歩いた力作。縦約84センチ横約60センチで裏面には地名の由来も記されている。
 奥多摩版の特徴は地名が176か所と塩山・丹波山版の102箇所、小菅版の45箇所と比べて多いこと。「山岳宗教が盛んだったほか、自然と関わりのある生活をした人が多かったからでは」と中村さんは分析する。

 地名を見てみると聖滝、精進場、尼が淵など、宗教色の濃い地名が目立つ。また、「ゼンベイ滝」、「クエモンの大淵」などのように怪我や死亡した人の名前をつけたと思われる地名も多く、奥多摩の自然の険しさもうかがわせる。
 川の流れがミミズのようにうねった場所には「メメズギャーラ」、川音が大きい場所は「鳴瀬」、水が波打つ様子を表現した「瀬波」など「自然に親しんだ人たちならではの観察力」(中村さん)でつけられた地名も魅力的だ。

 奥多摩版に収録された地名の約8割を中村さんに伝えた山崎進さん(日原)が完成直前の9月末に亡くなった。「絵図を完成させるために天が引き合わせてくれたのでしょうか」と中村さん。

 絵図は多摩川源流研究所で1000円で販売しているが「地名には昔の人たちの自然への感謝や愛着、畏敬の念が色濃く地名に出ている。絵図が豊かな水の恵みをもたらす現流域の理解を深めてくれれば」と中村さんは願っている。

 絵図に関する問い合わせは多摩川源流研究所(0428・87・7055)へ。

 

 

 (読売新聞多摩版記事より転載 ・写真提供/読売新聞)