急傾斜面をバラバラと崩落し続ける岩や土、クレーター状に割れた深み――。ニホンジカによる樹木の食害が進む奥多摩町の山林で、山肌の土砂が流失して岩が露出、大規模な土砂崩れが心配されています。記者は今月6日、被害が深刻な同町北東部の川乗(かわのり)山(標高1364メートル)南側山腹に入り、森林とは思えない様相に唖然(あぜん)としました。(坂井正人)
奥多摩町では約30年前、生息するニホンジカは約50頭にまで減少、1976年から2002年まで有害鳥獣駆除許可を除いて禁猟となった。しかし、禁猟による保護策でこの26年間にシカは激増し、2000年に1000頭、現在では3000頭と推定されています。ベテランハンターからは「以前は積雪が多いと、餓死したシカを見たが、最近は見ない」という声が上がっており、温暖化による積雪量の減少も原因と見られています。
シカの激増で山林の食害は進む一方だ。
川乗山・ウスバ尾根(1000―1100メートル)では、杉の苗がほとんど食い荒らされ、自生しているコナラなどが一部残っているだけ。少し下った大ダワでも同じ状況だった。いずれも草もなく、土と岩の山肌がむき出しになっていた。急斜面沿いの幅約50センチの登山道には、砕けた岩が崩れ落ちており、踏み外すと転落する危険性もある。
また、雨で土や岩が流失して、深い溝が多数出来ており、登山道から300メートルほど下では深さが2メートルにもなり、土砂が沢に流れ落ちているという。ウスバ尾根と大ダワには1991年から93年にかけて、32000本以上の杉苗が植林されたが、ほとんどが食い荒らされ、わずかに難を逃れた木も高さ1メートルほどで、細くて成長が悪い。被害面積は川乗山で推定12ヘクタール、町全体では同80ヘクタールに及ぶ。
一方、途中の山林では、山グリの実は食べられ、斜面にはシカやイノシシの新しい足跡が残っていた。えさとして樹皮をはがされた自生種のリョウブも多かった。
定期的に調査している同町観光産業課森林保全・活用担当の原島滋隆係長は、「食害で山肌が荒れ、雨のたびに大きな割れ目が出来ている。現状のままでは、災害だけではなく、土砂流失によって多摩川の生態系にも影響を及ぼしかねない」と危惧(きぐ)している。
写真=ニホンジカの食害で樹木がほとんどなく、土や岩で荒れた山肌(奥多摩町の川乗山で)
(10/9・読売新聞多摩版記事より転載
・写真提供/読売新聞)
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